嘘に支えられた真実たち [コラム]
「神々の住む島」と呼ばれるバリ島を訪れたとき、その自然の、あまりにも「あるべき姿」に圧倒された。吸い込まれそうな青い空と、それに向かってぐんぐんと伸びる緑の木々。その色は、「青」や「緑」という理想に近すぎて、逆に偽物みたいだと思った。
幼いころから目指していた教師の職に就いた友人がいる。まっすぐに子供達と向き合い、その可能性を信じ、悩みながらも生徒達と一緒に成長していく彼女。私はその姿に、理想の教師像を見た。作り物みたいに美しく輝く彼女は、小説の中の先生みたいだと思った。
理想に近いものは、かえって嘘のように感じる。
心からの願いが叶ったとき、「夢みたい」ってつぶやいてしまうように。
“Too good to be true”なんていう慣用句に象徴されるように。
それは、理想の世界が現実に舞い降りてくる戸惑いなのかもしれない。
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『求めない』(加島祥造著、小学館)という本がある。その巻末に、こんな言葉があった。
「真実(リアリティ)は
嘘(イリュージョン)に支えられている
嘘に支えられない真実なんて偽物だ 」
逆説のように響く、「嘘」みたいなこの言葉こそ「真実」なのだろう。
著者の言う「嘘」とは、「世間の常識に反するもの」を意味している。人は幸せになろうとして何かを求め続けてしまう生き物だけれど、心の平安を得るためには、求めないことが大切なのだという「非常識」な「真実」を著者は説く。私たちに求めないことを求める、著者自身の矛盾を認めながらも。
私は少し違った角度から、この言葉を味わった。偽物にまみれた世の中では、本物に出逢うと逆に偽物のように見える。ありえないような理想の姿はきらきらとまぶしくて正視できない。我々をひるませ、ときには胡散臭ささえ感じさせてしまう。
そういえば、かの有名な哲学者プラトンは、イデア界という、物事の本質が存在する「嘘(架空)」の世界を想定したんだっけ。私たちの現実世界が、そのイデア界の投影なのだとすれば、やっぱり「真実」は「嘘」に支えられている。
きらきら輝く、嘘みたいな真実と対面して、そんなことを考えた。
『求めない』の巻末には、こんな言葉が続く。
「小さな嘘の裏には、小さな真実がある
大きな嘘の裏には、大きな真実がある」
叶えてきた大小さまざまな夢は、過去には大小さまざまな理想という名の幻(イリュージョン)だった。そう考えたら、きらきらがどんなにまぶしくても、現実になるまで目を背けたくないと思った。
今は幻想でしかないあなたの夢も、いつか嘘みたいな真実になりますように。
こんにちは!
すごく心にグッくる記事ですね。
by もこちん (2007-12-20 12:39)
☆もこちんさん☆
コメントありがとうございます!
たま~には、こんな記事も書いてみます。(^^*
by mymery (2007-12-20 19:08)